セルフマネジメント

知識を記憶することの恩恵。テクノロジーはあくまでも道具。

この記事はこんな方におすすめ
・人工知能などのテクノロジーを今以上に活用できるようになりたい!
・スタッフの注意力や判断力を高めたい!
・記憶することの大切さを伝えたい!

読む時間:4分

結論:記憶された情報(知識)によって、注意力、認識力、理解力が高まる。

今回のテーマは記憶の恩恵です。知識を頭に入れると、どのような良いことがあるのでしょうか。テクノロジーの進歩によって、記憶媒体の量は膨大になりました。

そのため、
・知識はネットを検索すればいくらでも出てくる。
・だから知識は不要。
・今からは創造性だ。

という意見が多いですね。私も最初と最後は賛成です。しかし真ん中にある、「知識は不要」について、断固として反対します。私がいくら反対しても仕方ありませんので、科学的な知見をご紹介します。

まずは、オックスフォード大学で行われた研究です。この研究は、記憶の有無によって視覚的な注意機能が変化するかを検証しました。実験では風景画(写真)を使い、その中に鍵のイラストを置きました。鍵のイラストがあるものが80枚、ないものが40枚で、80枚の鍵のイラストの場所を覚えます。その後、風景画を出してどこに鍵のイラストがあるのかテストします。その際に、場所のヒントを出したり、出さなかったりします。

その結果、ヒントを出した時の方が、当然ながら正解率が高かった。機能的MRIにて脳内の活動を見たところ、ヒントを出した時は高次視覚野という目から入る情報の注意に関わる領域が強く活動していました。これらの結果から、記憶は視覚的に何かを探す時の注意機能を高めることが明らかになりました。

次は聴覚の実験です。こちらはイギリスにあるMedical Research Councilの認知神経科学支部の研究です。この研究では、記憶の有無が聞き取りの能力に影響を与えるかどうかを検証しました。方法として、次の3パターンを比べました。単語が文字で出てその単語が発音されて聞き取るパターン、関係のない単語が文字で出て別の単語が発音されて聞き取るパターン、そして文字で表示されずにいきなりタンゴを聞き取るパターンです。またこの時、発音される単語のノイズの量も調整しました。

その結果、おわかりの通り、あらかじめ文字で示された方が聞き取りは良好でした。しかも、聞き取りにくい音に対する認識も向上していました。これは聞き取りにくさの影響を受けなかったのです。興味深いですね。カクテルパーティ効果の脳科学的な知見とも言えますね。騒がしいパーティ会場でも、自分の名前が呼ばれると聞こえる。つまり自分の名前は何度も呼ばれ、確固たる知識として脳内にありますので、聞き取りにくい状況でも認識できるのですね。

これらの研究から、やはり頭の中にある知識は多い方が良いことがわかります。知識が多いと頭でっかちになるなどと言われますが、知識の量と頑固さ(頭でっかち)は全く関係ありません。むしろ知識が増えるほど、知らないことも増えるので謙虚になります。

それと、ネットで調べれば良い、知識に価値はないなどと言われますが、これも半分正解で、半分間違いですね。知識量で勝負しても意味はありませんが、知識量がなければ注意力や判断力が高まることはありません。だからこそ、自分の頭の中にしっかりと知識を蓄え、それを使って実践して知恵を蓄え、さらに答えのない問いと向き合い続ける知性を磨いていきましょう。

やはり知識の最大化は、未だに不可欠です!

まとめ:
・知識は認識力や注意力を高める。
・知識は理解力を向上させる可能性が高い。
・テクノロジーに頼りすぎず、自分の頭の中に知識を蓄えることが重要。

本内容は、参考資料を元に考察したものです。そのためあくまで一説であり、真偽を確定するものではありません。
・Stokes MG, et al: Long-term memory prepares neural activity for perception. Proc Natl Acad Sci USA. 2012; 109(6):E360-7
・Sohoglu E, et al: Predictive top-down integration of prior knowledge during speech perception. J Neurosci. 2012; 32(25):8443-53
メンタリストDaigo:知識を操る超読書術

リサーチ協力のWhite.Crowさんのブログもオススメです:
https://academictheories.com/

知識の脳科学についてさらに詳しく知りたい方はこちら

組織に方針を定着させるための工夫。長期記憶の科学を利用する。前のページ

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