社会情勢

改めて!2025年問題と2040年問題

この記事はこんな方におすすめ
・医療と介護のこれからを知りたい
・組織の方向性を決めたい
・新しい事業を提案したい

読む時間:8分

今回のテーマは2025年問題2040年問題です。

2025年問題と2040年問題は、これからの日本の形を理解する上で非常に大切な問題であるため、改めてまとめます。2025年問題や2040年問題はよく耳にするけど、実際はよくわかっていない。どうせお金の問題でしょ。そんな声も聞こえてきそうです。

この記事をお読み頂ければ、しっかり説明でき、組織の方針を提案できるようになります!

日本の高齢化率は2017年10月の時点で27.7%となっています。もちろん世界最高であり、今後も増え続けることが予想されています。2025年とは、第一次ベビーブームであった1947〜1949年頃にお生まれになった方々が75歳以上(後期高齢者)になるという年です。

75歳以上になると病院にかかる頻度が増えます(外来・入院ともに)。もちろん病気になりやすいからですが、70歳以上の定率負担と高額療養費の最高額が低く設定されているため病院に行きやすくなっているという傾向もあります。それらの結果、医療費・介護給付費が増えます。

また2018年の医療費は約40兆円、介護給付費は約10兆円となっています。これに年金の56兆円とその他の福祉関連費用の15兆円が加わり、社会保障費が全体で120兆円となっています。当然ながら、565兆円の国内総生産(GDP)を逼迫していきます。

そして問題は社会保障費の伸び率です。日本の社会保障費の伸び率は、GDPの伸び率を上回っています。その結果、出すお金がない、他の予算を削らないといけない、国債(政府の借金)を発行しないといけない、という状況になりつつあるのです。

次に2040年。

団塊の世代の方々が、今度は90歳となります。医療の次は介護です。介護される方々が増える。しかしそれを支える医療・介護職は、少子化によって明らかに少なく、足りない。この現象は、もうすでに起こっています。

当然ながら医療費・介護給付費はさらに伸びます。GDPをさらに逼迫します。その結果、医療職・介護職に支払われる予算(給与)を削る。消費税などの税収を増やす(結果的に収入が減る)。防衛費や科学振興費・公共事業などを削る。

このようにして投資ができなくなり、経済が縮小する未来…

そしてこれらの背景には、医療ニーズの変化という重要な点があります。栄養状態の改善、生活環境(衛生状態)の改善、医療技術の進歩によって、急性感染症で亡くなる方は少なくなりました。代わりに、高齢などによって起こる生活習慣病や変性疾患といった、慢性疾患や障がいが増えています。感染症を中心とする急性疾患というこれまでの医療ニーズから、高齢によって起こる生活習慣病や変性疾患といった慢性疾患や障がいへの医療ニーズへと変化しているのです。

これらが2025年問題と2040年問題です。

ではこれらに対して、どのような手立てを講じているのでしょうか。

ご存知の通り、地域包括ケアシステムです。地域包括ケアシステムを平易に言うと、“住まいや生活を保障し、医療と介護を必要な人たちに必要な分を届け(適正化)、介護が必要にならない体をつくり、そして支え合っていくシステムを地域毎で構築しよう。”というものです。

地域包括ケアシステムのポイントは2つ。
①住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されること。
つまり生活に必要な保障が、思いつきやバラバラではなく、整理されている状態を作ろうということ。

②地域毎(中学校区単位)にて適切な形(ネットワーク)を作ること。
介護の状況などは地域差が存在します。そのため国による一律的な方法では非効率になります(政府の失敗)。それぞれの地域に合った形を、地域が主体的に作っていこうということです。

ここで医療において重要となる地域医療構想についてご説明します。
地域包括ケアシステムを構築するために、医療はどうあるべきなのか。医療費を適正にするためにはどうしたら良いのか。この問題を解決しようとする取り組みが地域医療構想です。
*医療費の削減という表現を用いますが、“持続的に医療を提供すること”が目的となりますので、“適正化”を念頭に置いていることを誤解しないでください。

日本の入院病床の数は世界一です(精神科病床を含めて)。そして入院用のベッドの数と医療費は相関(比例)しています。しかしベッドの数と国民の健康は相関していません。さらに医師の数は先進諸国と比較して少ない。つまり日本は、医療者が薄く引き伸ばされています(低密度医療)。その結果、医療費は高まり、医療の質は低いという厳しい結果になっている可能性があるのです。

そのため入院病床の機能を、高度急性期・急性期・回復期・慢性期と区分しました。そして二次医療圏毎に、それぞれの機能について必要となる数を算出します。その数と、現在の数とを用いて、病床数を適正にしようという取り組みです。特に急性期のベッドが多いため、減らしていこうという動きが活発になっています。

医療ニーズが急性疾患から慢性疾患へと変化しています。しかし、医療の形や生活スタイルは急性疾患に対応する形のまま。介護サービスを受けるべき人が医療サービスで代替されている可能性が高い。これでは当然ながら現在の医療ニーズに応えることができず、必要以上のコストが発生しており、必要な方に必要な医療や介護を提供できていない可能性があります。

では、この医療ニーズの変化に対して、私たちは何ができるのでしょうか。
地域包括ケアシステムの定義を思い出してください。住まい・生活支援・医療・介護・予防の5つです。そして、急性疾患から慢性疾患へと医療ニーズが変化しています。“治し、支える”という表現になります。機能障害の治療だけではなく、疾患や障がいを抱えたままでも人生の最後までその人らしい生活を支えること。

最後まで自分でトイレに行けることなどが求められるのです。
そしてそのためには、
・介護が必要になっても生活できる住まいを作ること。
・入院中に廃用症候群が起きないようにすること。つまり、入院する原因になった病気が軽快したら、すぐに在宅に戻れるようにすること。
・在宅で生活できるような介護の仕組みを整えること。
・介護が必要にならず、できるだけ自分で動けて、できれば働ける体を作ること。
・自分の親が障がいをもった場合にどうするか、あるいは、自分が老いたらどうされたいかを話し合い、決めること。

これらを達成するために、仕組みを作ったり、現場でサービスをしたり、研究をしたり。変化した医療ニーズに対応するために、やらなければならないこと、そしてできることは山ほどあります。

これらは新型コロナウイルス感染拡大の前の形です。しかし人口の動きと医療ニーズの変化は変わっていません。

つまり課題は残ったままです。

 

本内容は、参考資料を元に考察したものです。そのためあくまで一説であり、真偽を確定するものではありません。
内閣府 高齢化の現状

内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省:2040年を見据えた社会保障の将来見通し
政府統計:患者調査(平成29年)
厚生労働省:地域包括ケアシステム
日医総研:医療関連データの国際 比較-OECD Health Statistics 2019-
財務省:社会保障について
筒井孝子:筒井孝子論考集 地域包括システムの理論と政策

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